In His Times

中田英寿という時代

著 増島みどり

中田英寿がプロサッカー選手として戦った12年間を、振り返る形で書かれている本です。
この12年間は、日本サッカー飛躍の時でした。
−中田英寿という時代−という副題は、大げさでもなんでもなく、その言葉通りだと思います。

U−17世界選手権に始まり、ワールドユース、アトランタ、98フランスと初出場に導き、シドニーでは、02日韓では、決勝トーナメントの舞台へ。
日本が未知の舞台に足を踏み入れる時、必ずヒデがそこにいました。
もちろん、海外への扉を開いたのもヒデです。

日本サッカー界が本気になり、注目を集め始めた時代に生まれた選手、という状況はあったにせよ、その気流の象徴として、どこまでも上へ上へと導き、目指していってくれた選手です。
どんな批判があろうとも、これは明確な事実だと思います。

中田英寿。と聞いて僕が最もイメージが強いのは、やっぱりペルージャ時代です。
毎週日曜日、TVの前でヒデのプレーを楽しんでいた時期が懐かしい。
ヒデは、そんなつもりはないと言うだろうけど、僕たちは、やっぱり彼に日の丸をみていた。ゴールを奪えば誇らしかったし、ヒデが中傷されれば、頭にきた。
ブルーのユニフォームを着ていない。日本代表だった。
あの頃の高揚感なんかは、もう味わうことはできないだろうと思う。

この本は、はっきり言ってせこいです。
過去の記事を抜粋して作られたものだし、真新しい事実が書かれているわけでもない。 ヒデの引退後の記事や、ヒデを懇意にしてた人たちのインタビューはあるけど、そこまで魅力的とはいえない。
お薦めだよ!今すぐ読みなよ!とは思わない。

でも、何十年後かに、もし日本がW杯を掲げる日がきた時なんかに、読みたい本だと思う。
”この物語、成功の始まりは、コイツなんだ” って、振り返って絶対読みたくなる。
その時のために、持っていたらいい本だと思う。その時は泣けるかもしれない。

旅を続けるヒデに、もしパッと出くわしたら、僕はなんて言うだろうと考えてみた。
「あっ、中田さんですよね!」 といった後に、
続けて 「ありがとうございました」 って言うような気がする。
ヒデがあの時代を生きていてくれなかったら、僕は、間違いなくここまでサッカーを好きになってなかったから。そのことに、まずお礼を言いたい。
それから、 「もうサッカーの世界に戻ってこないんですか?」 だろうね。